恋歌-Renka-
「わ、わかった……く、苦しいから離せ………」
「あぁ、わりぃ」
帝が申し訳なさそうに謝る。
そんな子犬みたいな
顔するなよ………
「いや……大丈夫。それより帝………マフラー巻いてあげる」
私は帝の手にあるマフラーを
取って、彼の首に巻き付ける
「ど………どう?」
「似合ってるぞ………思った通りだ!」
私は嬉しくて
満面の笑みを溢した
「なぁ………」
「ん?何だ?」
「1つお願いがあるんだけど……」
「お願い?」
私は首を傾げる
「俺のこと名前で呼んで…」
「名前でか………って、え!?」
「昔みたいにさ……」
「涼太くんって?」
「そう………でも今回、君づけはいらないかな」
それってーーーーー
涼太って呼び捨てに
しろってことだよな……。
「む、無理!!恥ずかしくて言えない!!」
「いいから………言えよ。」
急に命令口調になるから
私の心臓がトクンと跳ねる
「りょ……りょ、た………」
「聞こえない」
「りょ………涼太!」
やばい、めっちゃ
恥ずかしい!!!
きっと私の顔は
真っ赤だ
「よく、出来ました」
そう言って私にキスをする
そのキスが凄く
甘くて嬉しくて
名前呼びも悪くないなと思った。
長い間、重ねあった唇……
いつまでもいつまでも
この幸せが続きますように。
けれど…………
唇が離れて去っていく
彼の背中を見ていたら
なんかもう会えなく
なるような気がして
「涼太!!」
私は呼び止めていた。
「なに?」
笑顔で振り返る涼太。
「愛してる!!!」
大声で叫んだ
涼太は一瞬驚いたような
顔をしてすぐ
「俺も……愛してるよ」
そう返してくれた。
それだけで私は
幸せになれる……
彼の背中が見えなくなるまで
手を振って家の中に入った。
その日私はペアリングを
はめた手を握りしめて
眠りについたーーー
これから残酷な運命が
私たちを待ち受けているとも
知らずにーーーーー