恋歌-Renka-
「残念ながら………嘘じゃないんだよね」
ニヤリと怪しい笑みを浮かべ
敬語をやめる霧山
嘘じゃないって
どういうことだ?
「もういい………花音行くぞ!!!」
涼太が私の手をギュッと
強く握って走り出した。
ーーーーーーー
霧山が追いかけてくる
様子もなく
無事に私の家へと
たどり着いた………
「まあ、たぶんさっきのは何かの間違いだから、あまり気にするな………じゃあまたな。」
「やっぱり……今日俺ん家に泊まれよ」
涼太が心配そうに
どこか切なそうに
私の手を強く握る
「それから………その表札」
涼太が"吉野"と書かれた
表札を指差す
今まで触れてこなかったから
気にしてないのかと思ってたけど
やっぱり…そんなわけないよな。
私は意を決して
話す事にした
ーーーーーーー
近くの公園に移動して
ブランコに腰をかける
暫くの沈黙を
破ったのは私だった。
「どこから話せばいいか………とりあえず涼太がうちに遊びに来なくなった後の話からだな………」
私は重い唇を開いて
淡々と語りだした。
それを真剣に
頷きながら聞く
私は母親に殺されかけたこと
その母親が死んだこと
そのせいで心を閉ざしたこと
葬式後……母親の姉の
汐莉おばさんに引き取られたこと
何もかも全てを
包み隠さず話した。