恋歌-Renka-
霧山が私の隣の席まで
歩み寄って来て
「宜しく」
わざとらしく微笑む
私は霧山を視界に入れず
机に伏せたーーーーーー
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始業式も終わり
下校時間
「ねぇ………花音。霧山くんとどんな関係?」
教室に戻るなり萌奈が
私に歩み寄ってきた。
「私の婚約者らしい」
「婚約者!?」
萌奈があまりにも
でかい声で叫ぶから
周りの生徒の視線が
私たちに集中する
「ちょ、萌奈!声がでかい」
私が慌てて萌奈に言うと
「あ、ごめん」と申し訳
なさそうに謝る……
「でも、婚約者だなんて………私たちまだ高校生だよ?一体どういうことなの?」
今度は小さな声で
聞いてくる
「話せば長くなる……とりあえず今言えることは………全て私の父親が仕組んだこと」
「花音のお父さん?」
そうだよな………
涼太以外みんな
私の過去を知らない
やはり説明する
べきだろうか………
そう思い口を
開いたところで
「お取り込み中、申し訳ないけど……この子もらってくよ」
霧山が割って入ってきて
私の手を掴み歩き出す
「ちょ……何のつもりだ!?」
振りほどこうと
精一杯の力を入れても
なかなか離れない
どんだけ力強いんだ
この男…………