恋歌-Renka-




放心状態のまま
歩き続ける



気づけば自分の
家の前まで
来ていた………




「涼太!」




その声に花音かと思って
勢いよく顔を上げるが



もちろん花音なわけがなく
そこには焦り顔の美保がいた




花音なわけないか……
心の中でそう呟く。




「涼太!!花音の電話繋がらないんだけど!何か知らない!?」




「フッ………ククッ」




なんか、何もかもが可笑しくて
狂ったように笑いだした俺に



「え………涼太?」



美保は驚きを隠せないでいた。




「花音なら、ここにはいない。」





「あ、そう。じゃあどこに……」




「日本にいない」





「え?」




無心で言葉を吐き出すと
美保は訝しげに、でもちゃんと
受け答えをしてくれたが



そんな美保の言葉を遮る俺
さらに驚いた声を上げる美保





「もう、花音は………ここには……日本にはいないんだよ……」





俺はその場に崩れ落ちた。





アスファルトに打ち付けた
膝より心が痛い





このまま消えて
なくなれたら





どんなに幸せだろう?

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