恋歌-Renka-




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先輩の"送る"を
頑なに拒んで
一人になった途端





自分でもびっくりするくらい
大粒の涙たちが溢れ出した。



止めたくても止められないまま
その場に崩れ落ちる



苦しい……苦しい……
叶うことのない一方的なこの感情が
こんなにも辛いものだなんて知らなかった。




「大丈夫ですか?」




不意に聞こえた声に
顔を上げると



そこには金髪の男性がいて



「だい………じょぶ……ですっ」



嗚咽を漏らしながら答える。



「そんなに泣いてて何が大丈夫なの?」




「へ?」




だけどその金髪の男性は
私の手を優しく取ると
近くのベンチまで誘導する




「無理するなよ…俺で良かったら話聞くから」




隣に座った金髪の男性は
ニコリと優しく微笑んだ。




本当ならば…
見ず知らずの男性に
話しかけられた時点で
逃げるべきなのだろう





でも今は………
この悲しみと苦しみを
誰かに話す事で
半減させたかったから



何の意味もないとは
わかっていても……



話さずにはいられなかった。



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「そっか。それは辛いね」




私は先輩との出来事を
一から全部話した。




彼は嫌な顔ひとつせず
真剣に私の話を聞いてくれた




「惨めな女ですよね私……だって相手は歌手で美人で勝ち目なんて絶対にない………」



自分で言ってて
また泣きそうになる



「そんなことないんじゃない?実は俺もね……辛い恋をしてるんだ…」




彼は悲しそうに
微笑んで空を見上げる




「話してください。今度は私が貴方を元気づける番です」




私が優しく微笑むと
彼は重い口を開いたーーーーー




「俺ね………婚約者がいるんだ。」




「婚約者………」




きっとたぶん……
私より年上だよね?




なら、婚約者がいても
おかしく無いのかな………





「うん。でもね……彼女が好きなのは俺じゃ無いんだ………」





「え?」





彼の発言にびっくりした私は
思わず聞き返してしまった。





俺じゃないって………
別に好きな人が
いるってこと??
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