恋歌-Renka-
「そう……君が考えてること。まさにその通りだよ。」
「へ?」
まだ口に出してないのに
何で分かったんだろう?
私が不思議そうに
首を傾げていると
「ああ、だって顔に書いてあったんだもん。"他に好きな人がいるの?"ってさ………」
「嘘!?」
私は両手でほっぺを覆った。
「う・そ」
するとクスクス笑いながら
そんな事を言う
「もう!からかわないで下さい!」
私もつられて笑う
「やっと笑ったね……」
「へ?………あ、本当だ。」
笑っていることに
言われて初めて気づく。
「人間ね、笑うのが一番なんだ……。俺の婚約者の名言ね、これ」
「良いこと言いますね」
「だろ?だから本気で好きになったんだ……」
「その恋、叶うといいですね!」
私は満面の笑みで彼に言う
「君もね」
彼も微笑んで私の頭を
くしゃくしゃっと撫でた。
「じゃあ、私…そろそろ帰ります!」
「そうだね…。あ、そうだ!その前にこれ」
彼はスーツのポケットから
一枚の紙を取り出すと
それを私に差し出してきた
名刺?
「俺の会社と名前と電話番号載ってるから……何かあったら電話してよ…相談乗るからさ」
彼はそれだけ言うと
手をヒラヒラさせて
去って行ってしまった。
「なんか、不思議な人だったな。イケメンだったけど………」
私は名刺に視線を落とす
○○レコード会社
佐久間 遙
×××-××××-××××
へえ、有名な
会社の社員さんなんだ。
私は感心して
名刺を鞄にしまい込み
さっきより気持ちが楽になった事を
実感しながら帰宅の途についた。