恋歌-Renka-





「久しぶり………やっと見つけた。つーか、しゃべり方変わってね?」



「ああ、アーティストになるにあたって日々の訓練で直されたの。どう?女らしくなった?」



と妖艶に笑う花音。



身長も体型も高校生の時より
遥かに成長しているのに




顔だけはいつまで
経っても童顔で…………。



「何で、俺のところに帰って来ないの?ペアリング取りに来るんじゃなかったのかよ………」



気づけばそんな事を
口走っていた。



最も聞きたくて
最も聞きたくない言葉



そんな俺の質問に
花音の瞳が微かに揺れる




「ねえ、涼太。もう、ここには来ないで」



「は?」




「だってあれから5年も経つんだぞ?私はとっくに涼太のことなんて…………あ…………」




急に男口調に戻る花音。
真剣な話をするときは
戻っちゃうみたいだな。




「じゃあ、今はもう俺を好きじゃないってこと?」



「そうだ。」



何だそれ。



この5年間………………



俺がどんな思いで
いたか分かってるのか?



「私はもう、お前を好きじゃない。だから、もう私に関わらないでくれ」



「最低だな。最悪だよお前。俺は5年間、無駄に過ごしてきたわけ?俺の時間返せよ………」



違う。こんな事が
言いたかったんじゃない。



分かっているのに
止まらない………。



好きだからこそ
裏切られた事が
辛くて苦しくて



「お前の顔なんてもう見たくない」




「りょ、涼太!」




そう言って花音を残して
俺は客室を飛び出した。



今思えば
俺はバカだった。




何も知らずに
酷い言葉で彼女を
傷つけた…………





最低なのは
俺の方だったーーーーー
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