恋歌-Renka-
「帰ろう…………」
しばらく泣き崩れて
落ち着いた私に
遙が手を差し出す。
「ありがとう」
私の初恋は
これで終わった。
これで良かったんだ。
涼太を悲しませるくらいなら
苦しむのは自分だけでいい。
そんな私の考えは
間違ってる?
答えはわからない
「あと、一週間後には手術だし、明日には芸能界引退のインタビューだってある………少しでも体を休めて明日に備えよう?」
遙の言葉に頷いて
私は自宅に帰り
眠りについたーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
翌朝
窓の隙間から
差し込む光で
目が覚める
その直後に私の
心を支配する虚無感。
かつてリングをはめていた
左手の薬指を擦ると
また涙が溢れだしてきた。
日本に帰ってきたとき
すでに汐莉おばさんは
亡くなっていた
大切な母といっても過言ではない
汐莉おばさんに親孝行すらできず
看取ることすら叶わなかった。
その上、父も失ってしまった私
もう身寄りは
だれ一人いない。
でも、血は繋がって
いなくとも…………
遙は私の弟だったから。
同い年で顔の全く似てない弟。
いや、実際どっちが上で
どっちが下かなんて
わかんないんだけど………。
私にはもう
遙しか残ってない。
父が亡くなってすぐ
私も父と同じ病気だと
発覚した
その病名は癌
わりと早めに見つかったおかげで
すぐ手術して治したのだけど
日本帰国後
また再発してしまった。
あの時の生放送で
歌った"恋歌-Renka-
という曲は
涼太への思いを
精一杯込めて書いた曲。