恋歌-Renka-



だけど、この5年間……
花音か片時もあの男を忘れる
ことはなくて……



花音を好きになっても
報われることなんてないって
わかっていても好きは募る一方で



あの時……愛はなくても結婚はできる
そう言った自分を殺してやりたいくらい
花音に愛されない虚しい結婚は
したくなくなったーーーーーーー。



ーーーーーーーーーーーーー



そんな時……孝さんが病に倒れた。



末期癌。もう助からないと医者は言う。
余命宣告も数週間と短いもので
孝さんは呆気なくこの世を去ったーー。



その後、孝さんの荷物を整理していると
俺宛に書いた一通の手紙が出てくる



なんとなく、それを手に取って
読んでみると……それは孝さんが
素直になれない俺への気持ちを
たくさん綴った手紙だった。



愛されてたんだ……ちゃんと。
自分が気付けなかっただけで



死に際に何もしてやれなかった
そんな後悔と罪悪感が自分を支配する。



その手紙には花音に対する思いも
綴られていて……最後に



"遙……愛してるぞ。俺の大事な息子……。どうか俺の最愛の娘と一緒に幸せになってくれ"




そう書かれていたーーーーーー。
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