予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。





「香月くん!」

「麻、おそ…」

私の方を向いた香月くんは言葉を止めた。


「あの…午後私と回るって言ってくれたの本当?」

「え、あ、ああ…」

「本当!?ありがとう!」


私が笑うと、香月くんは顔をそらした。


「なんで着替えてんだよ。」

「よっちゃんがね、やってくれたの。
せっかくの文化祭だし…可愛くしたくて。」

「文化祭だからだよ。」

「え?」




「えっ、七瀬?」
「めっちゃいいじゃん!着替えたの?」

クラスの男子が話しかけてきた。
私は緊張して、あたふたしながら答える。

「あっうん。
せっかくだし自由時間はって…」

「似合う似合う。写真撮ろうぜ。」

「えっあ、うん!」


そのとき、くいっと後ろに引っ張られた。


「劇始まるぞ。東郷のクラスの。」

香月くんが私の帯を引っ張ったようだ。

「あ、そうだね…。
ごめん、またあとでね。」

クラスメイトに謝り、香月くんのあとに付いて歩き出した。


「エヘヘ…」

「なに笑ってんだよ、気持ち悪い。」

「いや、香月くんと着物おそろいだなって。」

「……。」

「明日はちゃんとダ貞子で宣伝するからさ!
今だけ…。」

「別にいいよ。」


意外だ。
ダ貞子で宣伝しろって言うと思ったのに…。


「アハハ…そだよね。私影薄いし…
ダ貞子でも着物でも大差ない…」

「俺と一緒にいるときならいい。」

「え…」

「お前アホだからな。
ナンパしてきたヤツに逆におごったりしそうだし。」

「なっ!そんなバカじゃないよ!
そもそもナンパなんて…」

あれ

もしかして…私のこと心配して?


香月くんの顔を見ようとしたが、劇が始まり、
暗くなっていたので見ることはできなかった。


心配してくれたって思うことにしよう。

毎日早起き頑張ってるご褒美だ。



< 103 / 121 >

この作品をシェア

pagetop