予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
「香月くん!」
「麻、おそ…」
私の方を向いた香月くんは言葉を止めた。
「あの…午後私と回るって言ってくれたの本当?」
「え、あ、ああ…」
「本当!?ありがとう!」
私が笑うと、香月くんは顔をそらした。
「なんで着替えてんだよ。」
「よっちゃんがね、やってくれたの。
せっかくの文化祭だし…可愛くしたくて。」
「文化祭だからだよ。」
「え?」
「えっ、七瀬?」
「めっちゃいいじゃん!着替えたの?」
クラスの男子が話しかけてきた。
私は緊張して、あたふたしながら答える。
「あっうん。
せっかくだし自由時間はって…」
「似合う似合う。写真撮ろうぜ。」
「えっあ、うん!」
そのとき、くいっと後ろに引っ張られた。
「劇始まるぞ。東郷のクラスの。」
香月くんが私の帯を引っ張ったようだ。
「あ、そうだね…。
ごめん、またあとでね。」
クラスメイトに謝り、香月くんのあとに付いて歩き出した。
「エヘヘ…」
「なに笑ってんだよ、気持ち悪い。」
「いや、香月くんと着物おそろいだなって。」
「……。」
「明日はちゃんとダ貞子で宣伝するからさ!
今だけ…。」
「別にいいよ。」
意外だ。
ダ貞子で宣伝しろって言うと思ったのに…。
「アハハ…そだよね。私影薄いし…
ダ貞子でも着物でも大差ない…」
「俺と一緒にいるときならいい。」
「え…」
「お前アホだからな。
ナンパしてきたヤツに逆におごったりしそうだし。」
「なっ!そんなバカじゃないよ!
そもそもナンパなんて…」
あれ
もしかして…私のこと心配して?
香月くんの顔を見ようとしたが、劇が始まり、
暗くなっていたので見ることはできなかった。
心配してくれたって思うことにしよう。
毎日早起き頑張ってるご褒美だ。