予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。





楽しい時間はあっという間だった。

色々なクラスの出し物を回り、あっという間に1日目の終了時刻となった。


「楽しかったね。」

「まぁまぁ」

素直じゃないなぁ…

香月くんの言葉にくすっと笑い声がこぼれる。

「私たちのクラスもこのままいけば黒字だって。
人気投票は東郷さんのところの劇がダントツみたいだけど…「香月くん!!」


私の言葉を遮ったのは、クラスメイトの高下さん。
たしか、香月くんを好きな子だ…

イヤな予感がする。


「なに?」

「ちょっと…来てくれないかな?話があって」

「…」


告白だ。

夢が本当になった。

そしたら…香月くんの返事も…?


「わかった。」

香月くんは私のとなりからすっと離れ、
高下さんの後ろについて歩き出した。

「まっ…」

いや、ここで止めるのはおかしい。
私は香月くんの彼女じゃないのに…

でも、
でも…!


私はズルいとは思いつつ、人ごみを利用して二人のあとをつけた。

二人は開放エリアと離れた人気のない教室に入っていった。


気づかれないようにドアの隙間から中を覗く。


ドキッ

夕日の差す教室。
外から聞こえるステージの音楽。
夢と一緒…

私はごくりとつばを飲んだ。


「ごめんね。麻ちゃんと一緒だったのに…」

「別にいいよ。」

「あの…
つ、付き合ってないんだよね?麻ちゃんと」

「つき合ってないよ。」

ズキッ…

本当のことなのに…
どうしてこんなに胸が痛いんだろう。

高下さんは顔を真っ赤にしている。

夕日のせいじゃない。
夕日よりもっともっと赤い。


「好きです!付き合ってください!」


夢と同じ台詞を言う高下さん。


イヤだ。イヤだ。


あの腕で…
私じゃない女の子を抱き締めたりしないで。


「俺は…」ガタッ!!


思わずそばにあった机を動かし、
音でその空気を壊した。


我に返り、自分がやってしまったことに猛烈な罪悪感を感じる。

私はその場にいられず走って逃げ出した。


やってしまった…!
人の告白の邪魔なんて…
最低。最低!!


人混みのなかに戻ってきて、すごい早さで鳴る心臓を押さえつける。


「はぁ…はぁ…っ」


香月くんに恋するまで、こんなにも意地悪い自分を知らなかった。

こんなにもみっともなく逃げる自分を知らなかったよ…。


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