予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
***
放課後ーー
「麻ちゃん。私このあと用事あるから帰るね?」
「えっ!!」
朝練の時間と昼休みを使って対戦校分析をしていたのに、私の資料は半分くらいしか終わっていない。
「東郷さん、資料作りもう終わったの?」
「終わったよ~。麻ちゃんより多い量♡」
「うっ…」
「朝言ったよね?
終わんなかったら、麻ちゃんのこのブス写真校内の至るところに引き伸ばして貼るから。」
そう言ってかざしたスマホの画面には、
半目の私のプリクラ。
「そ、それどこで!!
よっちゃんと撮って失敗したやつ!!」
「香月くんにもらったの。バイバーイ。」
絶対よっちゃんが香月くんに送ったんだ!
バカバカーー!
東郷さんは楽しそうに手を降って部室をあとにした。
部室に一人になったのもつかの間、
練習を終えた部員たちが荷物を置きに入ってきた。
「麻、何してんの?」
「大連くん。
今週末の地区大会の調べものをちょっと…」
「相変わらずどんくせぇな、麻は」
そんなひどいことを言うのはもちろん香月くん。
でもその通りすぎて言い返せない。
「まぁまぁ、香月。
麻、このあと一年でファミレス行こうとしてたんだけど、麻も来る?手伝えるかもだし。」
「いや!そんな!悪いから。
これはマネージャーの仕事だし…」
「別に…みんなでやった方が早いし」
「いいの!
私も…みんなの役に立ちたいから。」
大連くんはいつもの優しい笑顔を浮かべた。
「そっか」とつぶやくと、私の頭をぽんと撫でた。
「香月、行こうぜ。」
「俺は残るよ。」
「え?」
大連くんの誘いを断った香月くんの言葉に驚きの声をあげる。
香月くんは上から私を見下ろして笑った。
「どうせ一緒に帰らなきゃいけないんだから、
ここで時間潰す。」
「そっか。じゃあまた明日。」
大連くんたちはあっさりと部室から出ていってしまった。
賑やかだった部室が一気に静かになり、
それに反するように鼓動が高鳴りだす。
「ご、ごめんね。
みんなとご飯だったのに…」
「いいよ、別に。」
「いつも…断らせてるよね…。」
「お前のためじゃない。自分のためだから。」
自分のためって言うのは予知夢を回避するため。
断じて私と一緒にいるのが楽しいから、とかではない!!
「アハハ…そうだね。」
私は必死にペンを動かした。
香月くんを待たせている申し訳なさと
意識をそらすために。