予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
「えへ、あは。
だ、ダメかな…?」
「七瀬、四谷さんと仲良いだろ?
なんで俺?」
「香月くんとはもっと…仲良くなりたくて。」
「いや…俺も部活の人と帰りたいときあるし。」
「そ…そーですよね…」
「四谷さんと帰りなよ。
俺そんなに話すの上手くないし。」
いや、さっきからキモいことばっか言ってる私の
500倍コミュ力高いです。
「よっちゃん帰り道違うの。」
「あ…そう…なんだ。」
「うん…」
「……。」
き、気まずい!!
鬼のように気まずい!
はっきり部活の人と帰りたいって言われてるのに、
非常に申し訳ない…!
何とかしなきゃ。
私と帰りたいと思うような愉快な話を…!
「さ、サッカー部はいつ朝練してるの?」
「火曜日。」
「そうなんだ!」
よし、火曜日はもっと早起きする。
時間まで聞くのは怪しいから、
とりあえず朝5時にはM公園の近くに行って…
「七瀬」
「え?」
落としていた視線を右斜め上の香月くんに
向けると、思いがけず真剣な顔をしていて
ドキッとする。
「なんか俺に言いたいことあるんじゃないの?」
「え…」
待って。
この感じ…
コクらせようとしてない!?
んで、ふろうとしてない!!!??
ちょ、ちょっと待って!
まだ早い。
せめて予知夢の詳細がもっとわかるまで…
「何、改まって。
全然…アハハ、なんもないよ~。」
「……そっか。」
おもしろい話、おもしろい話…
「そうそう!
あ、そういえばこの間ね、テレビで~」
よ、よし。
なんとか切り抜けた…
フラれたら一緒に帰れなくなる。
絶対そういう雰囲気にならないようにしなきゃ。
もう、大連くんが余計なこと言うから…
私の家の近くに着くと、「じゃあ」と言って
香月くんは押していた自転車にまたがった。
「うん、今日はありがとう。」
香月くんが数メートル進んだところでダッシュで
家に入り、荷物を投げ捨てて自分の自転車で
香月くんを追いかけた。
全力でこいでいたらすぐに香月くんに
追い付くことができた。
と言っても、もちろん数メートル後方。
香月くんにバレないように気をつかいつつ、
周囲にも警戒する。
夢で見たような大きなトラックが通れるのは、
学校から私の家の近くまでと
今朝香月くんを待っていたM公園付近の大通りだけ。
こっそりあとをつけ、香月くんがマンションの私道に入っていったところでブレーキを握った。
駐輪場に自転車を停める姿を確認して、
ひとまずホッと胸を撫で下ろす。
こんな生活がしばらく続くのか…
めちゃめちゃしんどい…
私は自転車の向きを変え、とぼとぼと来た道を
戻っていった。