予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
「あ、七瀬さん!」
「へ…」
昇降口で雨宿りしたまま香月くんを探していると、
意外にも大連くんが話しかけてきてくれた。
「香月探してんの?って、傘は?」
「アハハ…忘れて。」
「しっかりしてそうなのに。」
大連くんは優しい笑顔を私に向けた。
どうして…
「昼、あんな変なこと言ったのに、
どうして声かけてくれたの…?」
「ん~?
変なこと言われたのはあくまで香月だからな。
俺は言われてない。」
「へ…変な人…」
「七瀬さんに言われたくないって!」
大連くんの屈託のない笑顔に固まっていた心が
溶かされるようだ。
大連くんは周りの目なんて気にせず、
自分の考えで動ける人なんだ。
それって言葉では簡単だけど、すごく難しい。
少なくとも私はできない。
この人…いい人だな。
「……ありがとう、大連くん。」
「お礼言われることしてねぇって。
あ、そうだ。
七瀬さんって長いから、"麻"って呼んでもいい?」
「えっ、うん!」
男の子から名前呼び…!
キャーー!
「俺も夏樹でいいよ。」
「わ、私はまだ…緊張するから…。」
「そう?」
「えっと…!か、香月くんは!?」
「ああ。香月ね、先帰っちゃったよ。」
「え……?」
肩にかけていたカバンがずるっと滑り落ちた。