予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
「単刀直入に言う。
香月くんが死ぬかもしれないのは冬!」
「あー、そうなん。」
香月くんは興味なさそうにお弁当の中身を
もぐもぐしながら返事した。
「信じてない…。」
「信じてないねぇ。」
「だ、大連くんは?
私ね、予知夢で香月くんが死ぬ未来を見たの!
信じてくれる?」
「信じられないけど、
女子二人と昼ごはん食えてるからオールOK」
「よっちゃんは…」
「信じてないけど、
おもしろかったからオールOK☆」
うう…
この3人はだめだぁ
泣く泣くお弁当を食べる私を見かねて、
よっちゃんが尋ねた。
「麻、どうして冬だってわかったの?」
「えっとね!
服装が見えたの。学ラン着て、マフラーしてた。」
「なるほど…。じゃあまだ先の話だね。」
「冬だって言うなら、麻。
それまでストーキングやめろよ。」
「そんなわけにはいかないよ!
たまたま今回だけ冬だったのかもしれないし…
やっぱり心配だよ。」
「チッ」
また舌打ちされた~!
「麻、他に新しい情報は?
何か見えなかった?」
信じてないと言いつつちゃんと話を聞いてくれて、
よっちゃんはやっぱり優しい!
「あ、マフラー!
香月くんのマフラーの色、黒だったよ。」
「お。香月くん持ってるマフラー黒?」
「あー、マフラーボロかったから今年捨てた。」
「え…」
「黒いマフラー買えばいいわけ?」
「……」
予知夢を証明できる大事な証拠がぁ!
マフラーを買ったあとに色を言い当てていれば…
「残念だったね、麻。」
「うん…。でもちょっと安心だよ。
変わらず守るけど、少し肩の荷が下りた気分。」
「誰が荷物だ。」
「えへ、香月くん…」
香月くんはギロッと私を睨むと、
食べ終わったお弁当を包み直して立ち上がった。
「ごめん、冗談…」
「自転車で行くのやめたら、
ストーキングもやめるわけ?」
「え…」
「白いマフラー買ってやるよ。」
香月くんはそう言って、空き教室から出ていってしまった。