予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
「いない…」
俺を見ていないどころか、
そこには麻の姿すらなかった。
「香月!」
「っっ!」
俺の横をボールがすり抜け、
そのまま自陣のゴールに決められてしまった。
「香月、一旦頭冷やせ。
大連!!」
「はい!」
監督にコートから外され、
俺は1年の基礎練に加えられた。
くそ…
最悪だ。
麻なんかのせいで…!
「はぁ…」
違う。
麻のせいじゃない。
こんなの八つ当たりだ。
もう一度麻の定位置を見ると、
今度は麻が立っていた。
バッチリと目が合う。
麻は頭の上にはてなを浮かべた。
「ハハっ…間抜け面。」
『一旦頭冷やせ。』
そうだ。
なんであんなに麻にムカついていたか。
冗談でもアイツが俺をお荷物だって言ったことに
腹が立ったんだ。
事実はどうであれ、あんなにアホでちっさい女に
俺は守られている。
それがどうしようもなく悔しかった。
「くそ…」
「そう腐るなよ、香月。
そんな暇あんなら筋トレの補助してくれ。」
俺がいろんなことにムカついていると、
同じ一年の高崎が声をかけてきた。
クラスが違うからあまり話したことがなかった
けど、明るくて気の良いやつだ。
「いいけど…」
結局その日の練習は基礎練のまま終えた。