予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
「香月くん…お疲れ様。」
麻は少し気まずそうだ。
昼休みに俺が怒ったことを気にしているんだろう。
「あさ…」
「七瀬さん!」
「え?っと…」
一歩距離を詰めた高崎を見上げ、
麻は困惑した表情を浮かべる。
「はじめまして。俺、高崎駿。
七瀬さん、いっつもサッカー部見てるよね?」
「え…あ、うん…。
あ、はじめまして…。」
明らかに動揺する麻。
俺に付きまとうことに関してはぶれないくせに
こういうときは本当に頼りない。
「マネージャーになりなよ!」
「え…」
「こいつに務まるわけねぇだろ。
そもそも東郷いるし。」
「し、失礼な…!
私だって…きっと…たぶんできるよ…。」
「えっ、まじでー?
やった、めっちゃ嬉しい!」
「えっ、あっ…」
こいつ、アホか。
「とりあえず夏休み入ったら合宿あるからさ。
そのときに助っ人っていう形で!どう?」
「あー、うん。考えておきます…。」
「ありがとう!」
高崎はお礼を言うついでに麻の手を握った。
麻は不自然な笑顔を浮かべている。
「麻、合宿じゃ自転車なんか乗んねぇぞ。」
「自転車?」
「そ、そうなんだ!」
俺が話しかけると、麻はさりげなく
俺の斜め後ろに立った。
「それに、別にサッカー好きな訳じゃないんだろ?」
「"最近"は…面白いと思うようになったよ。」
やっぱ一番最初に話しかけてきたときの
『サッカーに興味がある』ってのは嘘か。
気づかずにボロだしてて、ほんとアホだな。
「香月くん、上手だし、頑張ってるよね。
私は素人だけど、見てたらわかるよ。」
「……」
「七瀬さん、俺は~?」
「えっ、えーと…
筋トレ頑張ってるよね。尊敬する。」
麻は意識的か無意識的か
俺を壁にするようにそっと一歩下がった。
なんで俺が高崎から麻を守ってるみたいな
構図になってんだよ!