予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
香月くんが好きだと気づいてしまった。
麻side
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2学期始業式ーー
「おはよう!香月くん!」
「おはよ」
香月くんの家のすぐ近くのM公園で
私は以前より落ち着いた気持ちで朝を迎えていた。
先日の予知夢的中事件を経て、
香月くんは私の言うことを信じてくれるようになった。
だから、夏休み最後の数日間と、今日も徒歩。
香月くんはかなりショックを受けたみたいだけど、私は歩きで来てくれることで、幾分心の荷は降りていた。
それに自転車で縦に並んで走るより話しやすいから、登下校の時間は今まで以上に香月くんと会話する。
そのことに少しわくわくしているのも事実…。
「歩いてきてくれてありがと。」
「麻にお礼言われる筋合いねぇわ。」
素直じゃないなぁ…
「もっかい整理するけど、X Dayの条件は
快晴の日・制服で・自転車に乗ってて・
マフラーをする冬に・男性の運転するトラックに跳ねられる。
だからね?」
「わかってるよ。」
香月くんはもちろんマフラーをしていない。
まだ暑いしね。
条件を気にしているのかはわからないけれど、
香月くんが周囲に注意を払っているのはわかる。
「信じてくれてよかったよ…」
「いまだに信じたくねぇけどな。」
「うん…本当に」
最近は特にそう思う。
香月くんに死んでほしくない。
友達になったんだから当たり前なんだろうけど…
それ以上に強く
「早く…なにごともなく…春になればいいね。」
強く
香月くんを守りたいと思う。
「そんな暗い顔すんなよ。
友達減るぞ。」
「っ!私にはよっちゃんがいるもん…っ」
「四谷さんだけなー。
他いねぇじゃん。」
「う、うるさい!!」
「ハハハッ」
香月くんは思っていたより、快活な笑顔を浮かべた。
「ま、何はともあれ、これからよろしくな。麻」
香月くんは私にまっすぐ右手を差し出した。
「えっ、うん!」
「せいぜい俺を守ってくれ。」
「がっ、頑張るよ!!」
私は差し出された香月くんの手を右手でぎゅっと握った。
守るよ。絶対。
私は改めて心に誓いなおした。