予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。
「お邪魔します…
あ、めっちゃ香月くんの匂いするね!アハハ」
「…」
香月くんは赤くなって私から顔をそらした。
わ、私なんてこと言ってるんだろう!
なんか話さなきゃと思って、一番変態っぽいことを…
「アハハハ…変な意味じゃなくて…
勉強しよ!お願いします!」
「ホントアホ。」
「アハハ…」
下手くそな愛想笑いに香月くんははーっとため息をついてテーブルの前に座った。
私もスペースをとらないようにこじんまりと正座する。
「何が一番ヤバイの?」
「数学かな…」
「歴史とか暗記系は一夜漬けでもなんでも気合いで乗りきれ。」
「うん…」
「数学は公式覚えて、解き方も覚えて、
応用するだけ。とにかく覚えろ。」
「うっ…
その覚えるのが苦手でして。」
「繰り返しやるしかねぇよ。
問題集やるぞ。わかんなかったら聞いて。」
「うん」
香月くんが広げたノートには、赤字でたくさん書き込みがしてあった。
やっぱり頑張ってるんだな。
「部活もそうだけど、頑張れる人はなんでもすごいんだね。」
「は?」
「サッカー部もレギュラーで、勉強も頑張ってて…同い年でこんなすごい人見たことないよ。」
「大袈裟だな。」
私は首を横に振った。
だって本当にそう思うもん。
私が諦めるような場面でも、香月くんは一歩二歩先に進めるんだろう。
一歩二歩先にゴールがあったら、
私には見れない景色が香月くんには見えるんだ。
「私も…香月くんを守ることだけは諦めずに頑張るからね。」
「お前の粘り強さは嫌ってほど分かってるよ。」
「エヘヘ…」
「……」
「よしっ、勉強もやる!やる気出てきた。」
「……」
「香月くん?」
「麻、高崎は?」
「え?」
私の勉強へ向いた集中力は、香月くんの質問で散らされた。