予知夢で香月くんが死ぬことを知ってしまった。





学校に着き、開会式を終え、
すぐに開店の準備にとりかかる。

みんなはテキパキ衣装に着替えて教室へ戻ってくるけれど、私はいつまでもモジモジ着替えずにいた。


「麻、着替えは?」

「よっちゃん…」


よっちゃんはもちろんガチ枠。
チャイナドレスを身にまとうよっちゃんは直視できないほどに可愛い。


「よっちゃんまじ可愛い…萌え。」

「気持ち悪いこと言ってないで、はよ着替えんさい。」

「いや、ギリギリまで制服でいたくて…」


そのとき、教室の入り口からわっと歓声が上がった。


「似合う~」
「やっぱ和服最高だね。」
「写真とろー!」


主に女子に大人気の人。
そこには予想通り香月くんの姿があった。

香月くんの背格好にも、短い茶髪にも、
和服がすごく似合う。

かっこいい…


普段は大連くんや男友達と話してばかりだから、あんな風に女子に囲まれているのを見るのは初めてだ。

文化祭だからみんな浮き足立ってるんだ…。

朝に感じた黒いモヤモヤした気持ちが再び体に拡がっていく。


「麻」

「えっ」

「もう開店だよ。」

よっちゃんに声をかけられ、時計を見ると開店の9時はまもなくだった。

「すぐ着替える…!」


私は香月くんたちがいる出入り口とは逆のドアから出て、更衣室へ向かった。


< 98 / 121 >

この作品をシェア

pagetop