下弦の月*side story*
その前髪を横に流してくれて、






「俺と…添い遂げてくれるか?」





その言葉は、プロポーズを意味しているんだとわかって。





はい、と頷いた。







「なら…今日はもう店じまいだな。」






「えっ…?いいの?」






「いいも何も…今日はクリスマスだ。」






すっかり、忘れてたけれどクリスマスだったんだ。




どおりで、ここに来る途中。




恋人同士らしい人達が多かった。






「少しだけ、待っててくれ。」





と、片付けを始めた淳平を見つめる。




今になって思えば、この人はいつだって。




私を見守ってくれてたような気がする。





自分の気持ちを隠して、抑えて。




たくさんの愛をくれてたんだ。





だから私も、この人なら着いて行けるって…思ったんだ。





無性に、好きって伝えたくなって。





グラスを洗い終わった淳平に、





「ねぇ…淳平、好き。」





って伝えると、少しだけ顔が赤く染まって。





カウンターの中から出て、




椅子に座っていた私をフワリと抱き締めて、






「不意打は、反則だろ。俺も好きだぜ。」






見上げた私の唇に、そっと淳平の唇が重ねられた。







「さて…帰るぞ。続きは…帰ってからだ。」






モッズコートを羽織って、鞄を手にした私の手を握った。








外へ出ると、綿雪が桜の花弁のように舞っていた。





「ホワイトクリスマスだね。」






「ああ、折角だしイルミネーションでも見て帰るか?」





見上げて頷いた私の手を引いて歩き出した、




淳平の背中を見つめながら、




ずっと何があっても、この背中に着いて行こうって誓った。







大通りを彩るイルミネーション。






「来年も再来年もずっと…ずっと一緒に見ような?」






「うん、見ようね。」







人目なんて関係ない。




何度も何度も、誓いのキスを交わした。













☆END☆

< 17 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop