下弦の月*side story*
《八重》



沖田さんと、松本先生の所に身を寄せてから。




日に日に沖田さんの容態は悪化していた。





相変わらず、口癖のように。




皆は何処にいるのか、訊ねたり。



独り言ように、近藤さんの盾にならなきゃ、と呟いている。






側にいる私は特に何も言えずに、決まり文句のような慰めの言葉しか言えなくて。





衰えていく沖田さんがあまりに儚くて………辛い。





月香のように、強かったら私はもっと沖田さんの支えになれたのだろうか。




新撰組の皆と過ごす中で、少しずつ強くなっていく月香を見ていて。





羨ましかった。





だけど、それも今にして思えば月香が本来、持っていた芯の強さなのかもしれない。




引き出したのは土方さんで、土方さんの側に少しでも長く居ることで、もっともっと強くなって。





自分の時代に帰っても生きていけるに違いない。




愛する人が側に居なくても。




ーーーそんなある日。





療養中の邸に、原田さんが一人で現れた。




寝ている、沖田さんを確認すると。





邸の外に私を呼び、






「近藤さんさんが、先日、斬首された…らしい…」






と、悲痛な顔で教えてくれた。






「…そうですか…沖田さんには言わない方がいいですね。」






そうだな、と泣きそうな私の頭に手を置いたと同時に。





原田さんの腕の中に、すっぽりとおさめられていた。






離れようと、身動ぎしても敵うはずはなく。






「そんな、泣きそうな顔をしてっと…勘の良い総司のことだ。何かあったのかって感ずかれちまうぜ。抱き締めててやるから、泣いちまえよ。で、総司の前には笑顔で戻れ。」





八重。






優しい、いつも助けてくれた温かさに。




声に、抵抗を自然と止めて原田さんの胸で涙を流していた。
< 20 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop