誰が為に、完全犯罪
「・・考えろ・・考えろ・・考えろ・・!」
考えろ・・考えろ考えろ考えろ考えろ・・。
ここから運び出すか・・?
いや・・俺一人だけでは・・
それに・・どこに捨てる・・?
となれば・・いっその事・・
【ほとんど正直で、ほんの数滴だけ偽物】
「考えろ考えろ考えろ考えろ・・。」
この頭の脳裏に・・
東野圭吾の『容疑者Xの献身』が浮かんだ。
まず俺がやるべき事は・・
少しでも【時間を稼ぐ事】・・・。
警察に犯人を追わせ、
その間に更なる準備を進める。
このまま逃げ切れれば一番良い。
だけど現実はそんなに甘くない。
だったら・・あの作品のように、
【最後は俺が逮捕される筋書き】を用意する。
今この場で[俺が殺りました]と自首しても・・
今この場で死体として初めて会った新庄を“殺した”と言っても説得力が無い。
警察を納得させる筋書き・・。
捜査を長引かせて、
“あ~ようやくこれで終わった”と言わせて、
・・俺を逮捕させる・・・・。
「考えろ・・考えろ考えろ・・・。」
俺にはあの作品の石神のような頭脳は無い。
だけど俺にとっての【完全犯罪】は、
アミが逮捕されなければ成立する。
「・・・・・やるしか無い・・・・。」
娘の将来が守られるなら、
こんな俺の命や人生なんてくれてやる。
爪切りを探し出した後、
新庄の死体に再び近づいて、
右手の中指を手に取った。
第1話 完