誰が為に、完全犯罪


6月5日
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「ごめんなさいね~。通りますよ~。」


救急車とパトカーを前にして、
チラホラと出来ていた野次馬。


その間を縫って・・階段を昇って、
“現場”となった201号室へ。



「よぉ増川。遅れてすまん。」


「相馬さん。お待ちしてました。」


鑑識班が続々と出入りして作業する中、
手袋をはめながら後輩と合流する。


「遺体、ご覧になりますか?」


「刺殺体だろ?まだご飯食べたばっかりでそんな気分じゃないからやめとく。」


「ハハッ元 検死官のくせに、
相変わらず血が苦手なんすね。」


「とりあえず口頭で頼むわ。」


遠目に見える・・覆われたビニールシートに手だけ合わせたところで、

増川が手帳を取り出したので、
私もメモの準備をする。


「被害者はこの部屋の住人、
【新庄マモル】24歳。

背中やお腹など複数の刺し傷があります。

解剖して詳しく調べるそうですが、鑑識によると死亡推定時刻は約4日前です。」


「凶器は?」


「現場には残っていませんでした。

ただ、台所を調べたところ“まな板”はあるのに“包丁”が無い点から、

この部屋にあった包丁が使われた可能性があります。」


「凶器は犯人が持ち去ったのか・・。
第一発見者は?」


「被害者がバイトしていたレストラン“フーニーズ”の店長さんです。

3日連続でバイトを無断欠勤したそうなので、

さすがに様子がおかしいと、違和感を覚えてこの部屋を訪れたそうです。」


「その時、鍵は・・・?」


「掛かっていなかったそうです。」



「・・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・あれ?“血”大丈夫ですか?」


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