誰が為に、完全犯罪
6月5日
*******************************************
「ごめんなさいね~。通りますよ~。」
救急車とパトカーを前にして、
チラホラと出来ていた野次馬。
その間を縫って・・階段を昇って、
“現場”となった201号室へ。
「よぉ増川。遅れてすまん。」
「相馬さん。お待ちしてました。」
鑑識班が続々と出入りして作業する中、
手袋をはめながら後輩と合流する。
「遺体、ご覧になりますか?」
「刺殺体だろ?まだご飯食べたばっかりでそんな気分じゃないからやめとく。」
「ハハッ元 検死官のくせに、
相変わらず血が苦手なんすね。」
「とりあえず口頭で頼むわ。」
遠目に見える・・覆われたビニールシートに手だけ合わせたところで、
増川が手帳を取り出したので、
私もメモの準備をする。
「被害者はこの部屋の住人、
【新庄マモル】24歳。
背中やお腹など複数の刺し傷があります。
解剖して詳しく調べるそうですが、鑑識によると死亡推定時刻は約4日前です。」
「凶器は?」
「現場には残っていませんでした。
ただ、台所を調べたところ“まな板”はあるのに“包丁”が無い点から、
この部屋にあった包丁が使われた可能性があります。」
「凶器は犯人が持ち去ったのか・・。
第一発見者は?」
「被害者がバイトしていたレストラン“フーニーズ”の店長さんです。
3日連続でバイトを無断欠勤したそうなので、
さすがに様子がおかしいと、違和感を覚えてこの部屋を訪れたそうです。」
「その時、鍵は・・・?」
「掛かっていなかったそうです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・あれ?“血”大丈夫ですか?」