誰が為に、完全犯罪
増川と一緒に、今度は被害者の“手”を片方ずつ持ち上げて見つめる。
防御創の一つでも残ってれば、更に当時の状況が考察できるけど果たして・・・
「綺麗に手入れされてますね・・。」
「まぁ調理場担当なら、
爪の手入れは入念にしてるだろうな。」
「・・・・あれ?相馬さんここ・・!」
「・・・・・・・・・・・。」
一定の長さに整えられた爪。
やすりで一定の丸みを帯びた爪。
「増川・・ナイス・・!」
「やっぱり中指だけ不自然ですよね!?」
“一定”のはずなのに、
“中指”の爪だけが明らかに短い。
なんなら“剥がれてる”と言ってもいいほど、
白い部分がなくて肉が裸になりかけていた。
「今回の犯人はかなり手強いかもな。」
「と言うと・・?」
「恐らく【DNA対策】だ。
被害者が抵抗した際、
中指の爪に犯人の痕跡が何かしら残った。
だからここだけ切り取ったってところだろう。」
「でも相馬さん。犯人は錯乱状態だった可能性があるんですよね・・?」
「・・・・。」
「そこから一瞬にして冷静さを取り戻して、
証拠隠滅を図ったって事ですか・・?」
「そうなるな・・。
すぐに逃げ出さずに、
犯人はこの場所に留まって“何か”をした。
“凶器を持ち去った”というのも、“指紋を拭き取るだけ”では済まない何かの意味があるはずだ。」
「まずは被害者の人間関係からですかね・・?
金目の物は盗られておらず、
怨恨の可能性が大ですから。」
「レストランの調理担当か・・。
とりあえず最初は、
お店の従業員からだな。」