空を舞う金魚
プロローグ
「君が好きだ。付き合ってください」
そんなことを言われたのは、卒業式の日。真っすぐに私の目を見たその人は、少し耳を紅くして、言葉を切ると唇を一文字に閉じた。
知らない人ではなかった。いや、全校生徒が彼のことを知っている。渡瀬智樹(わたせともき)くん。前代の生徒会長だった。
先生からも生徒からも人望が厚く、成績も優秀。スポーツもそつなくこなして、体育祭ではヒーローだった。
そんな、雲の上の存在の人が、どうしてこんな地味で平凡な私を好きだというのだろう? 驚きの動悸は次第に紅くなる渡瀬くんの頬の色が伝染したみたいに、ただの憧れだった気持ちに加速度がついて一気に恋に向かって走り出す。
「わ……、私……」
手が震えて言い淀んだその時。
そんなことを言われたのは、卒業式の日。真っすぐに私の目を見たその人は、少し耳を紅くして、言葉を切ると唇を一文字に閉じた。
知らない人ではなかった。いや、全校生徒が彼のことを知っている。渡瀬智樹(わたせともき)くん。前代の生徒会長だった。
先生からも生徒からも人望が厚く、成績も優秀。スポーツもそつなくこなして、体育祭ではヒーローだった。
そんな、雲の上の存在の人が、どうしてこんな地味で平凡な私を好きだというのだろう? 驚きの動悸は次第に紅くなる渡瀬くんの頬の色が伝染したみたいに、ただの憧れだった気持ちに加速度がついて一気に恋に向かって走り出す。
「わ……、私……」
手が震えて言い淀んだその時。
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