空を舞う金魚
週末土曜日。千秋は市内の神社に出向いた。毎年の七夕祭りは盛況で、人も大勢来ていた。

神社の鳥居を潜って境内へ足を運ぶと広い其処には大きな竹笹が三本飾ってあって、周りを竹で組み上げた囲いが作られている。境内の横にはテントが出ていて、其処に設置してあるテーブルの上で参拝者が皆、短冊に願い事を書いて竹笹の囲いに括り付けるのだ。短冊は七日の夜に焚きあげられて願いが天に上る。そういう行事を、千秋はずっと続けていた。

今年もマジックを手に短冊に向かう。この十年間、毎年書くことは一緒だ。

『渡瀬くんに、もう一度会えますように』

砂本に告白されているのに、こんなことを書いてしまうのは、失礼だろうか。でも千秋は、千秋の中で止まってしまっている時計を、進めたかったのだ。
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