空を舞う金魚
あの時……。渡瀬くんから告白されたときに返事が出来なかった自分から一歩踏み出したい。今、渡瀬くんが千秋を好きでなくても構わない。それだったらそれで、千秋の時計を引っ掛けていた留め金(・・・)が外れるような気がするのだ。止まってしまった時計は、千秋の呼吸を息苦しくしていた。何時も何かが胸の奥に引っ掛かって動けない。……そう。砂本さんにコーヒーショップで告白されたときのように。だから、千秋が本当に前を向いて歩いて行く為に、渡瀬くんに会いたいと思っていた。

……会えたら、今度こそあの時の返事をして。……其処から千秋は変われる筈だった……。
< 21 / 153 >

この作品をシェア

pagetop