空を舞う金魚
――「今日は失礼しました。ちゃんと考えるので、時間をください」
送ったメッセージに直ぐに既読が付く。そして手を振る犬のスタンプに、メッセージ。
――『あんまり真面目に考えすぎないでね。そういうところも、綾城さんの良いところだから』
どう、良いのだろう。砂本さんの要求に応えられてなかったのに。
取り敢えずお辞儀をするうさぎのスタンプと、おやすみなさいとメッセージを送って終わりにする。スマホをぱたんとサイドチェストに置くと、ベッドの上にごろんと寝転んで天井を見つめた。
……異性を最初に意識したのは、あの卒業式の日。でも、渡瀬くんはあの場から居なくなって、千秋は宙ぶらりんのまま、砂の中にひっそりと潜った。その千秋の手を取って水面まで引き上げてくれた砂本さんも息継ぎはさせてくれたけど、金魚になる方法は自分で見つけろと言った。