空を舞う金魚

金魚に……、ならなきゃいけないかな……。

砂の中から上の方を見上げていた時は、金魚たちはきらきらしててそれが羨ましかったけど、いざ自分の身に置き換えてみると、分不相応な気がして仕方がない。千秋はきれいでもないしきらきらもしてないから、そのまま砂の中に潜っていた方が良いんじゃないかなって思う。

(後ろ向きだなあ、我ながら……)

自分のことを、そう思う。十年もルーティンワークでやって来れたのは、発展型の思考がないからだ。毎日毎日同じことの繰り返し。人が出したごみの始末もマグカップの洗浄も、最後に行きつくところでその先がないから出来ること。その先を考えなきゃいけない仕事は、千秋には向いてないと思う。

(……向いてないよ……。だって、こんな性格だもん……)

そう思って思い出した言葉があった。
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