初恋キャンディ〜one-way love〜
カーテンの隙間から差し込む、眩しい夏の日差しに、私綾瀬向日葵は今日も目を覚ました。
枕元に置いたスマホで時間を確認する。
「5:30、か…よいしょっと」
ベッドから出て、カーテンをシャッと開けると、曇り空なんか知らないとでもいうかのように、雲ひとつない青空が広がっていた。
「んーっ、今日もいい天気だぁ♪」
ベランダに出て軽く伸びをすると、夏の早朝ならではの、澄み切った空気に包み込まれる。
私、この瞬間が一番好き。
開いた窓から入り込んでくる、爽やかなそよ風に、制服のスカートがひらひらとなびいた。
私が通っているのは、星彩学園という、この辺ではちょっと名の知れた公立進学校。
チェック柄のスカートとシルキーピンクのリボンがお洒落なこの学校の制服は、背が低い私のことも、いくらか大人っぽく見せてくれる気がする。
背中まで伸ばした髪をハーフアップにして、緩くウェーブをかける。お気に入りのリボンも忘れずに…。
そうこうして身だしなみを整えているうちに、時刻は7時になろうとしていた。
「わっ、やばっ」
慌てて階段を駆け降りてリビングに向かう。
「あらおはよ〜、っていうか、学校大丈夫なの?」
キッチンでコーヒーを入れていたお母さんがこちらを振り返って行った。
「むーり、やばい、遅れるーっ!!」
「5時半頃にはもう起きてんのにいつも何してるわけ?」
焦ってパンにジャムを塗っている私の横で、呑気に牛乳を飲んでいた弟の勇翔が呆れたように言った。
弟っていっても、勇翔は私と同じ高校1年生で、再婚したお義父さんが連れてきた子。私とは血が繋がっていない。
えっと、いわゆる義弟ってやつ?誕生日は私の方が早いから、一応姉ってことになってるけど、実際は20日しか離れてないんだ。
勇翔とは前から仲が良くて、私も普通にゆうくんって呼んでたから、彼が私の弟になると言われた時には驚いた。
まぁ、今ではもう、ちょっとずつ慣れてきてるけど(笑)
「身だしなみとか整えてると、気づいたらいつも7時になってるんだもん」
「そんなの5分くらいで終わるじゃん」
「しょうがないでしょ!?女子は色々あるんです!男子には分からない事情がたっくさーんあるんだから!」