初恋キャンディ〜one-way love〜
「オーライオーライ!パスッ!!」

朝練の途中…俺はボールを追いかけながらも、あの子を探していた。

…あ、いたいた。

彼女の、胸元まで伸びた艷やかなセミロングの髪は、今日も斜めでゆるく結ばれて、風にさらさらとなびいている。

黒目がちの大きな瞳は、誰かを探しながら、遠慮がちにコートの奥…俺たちの方を見つめていた。

(誰かのこと探してんの?それならいっそ、その誰かじゃなくて、俺のこと見てくれればいいのに…)

彼氏でもなんでもないのにそう思ってしまう元凶は、俺の勝手な独占欲。

いつからだろ、彼女のこと、他の誰かに取られたくないって思うようになったのは…

俺をこんな気持ちにさせる彼女は、松本莉雨。

そう、俺の特別な人…

俺が彼女を初めて見たのは、二年前の4月下旬。

ちょうどハナミズキの花がきれいに咲いていた頃のこと。

最後の地区予選で負けてしまった悔しさから、俺は予選試合が終わったグラウンドの隅っこで、密かに泣き崩れていた。

その時不意に、俺の耳に響いた優しい音色。

俺はつられるように、その音色が聞こえる方へと近づいていった。

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