初恋キャンディ〜one-way love〜
思わず口に出してしまって、勝手に焦る。

ちょ、待て俺、何かわいいとか普通に言ってんだよ!!

聞こえてたらどうすんの?!

若干焦りながら彼女を見ると、松本はきょとんとした表情で、控えめに言った。

「ごめん、聞こえなかった…えと?」

…良かった、聞こえてなかったみたいだ。

「っあー…なんでもない。てか、そろそろ時間ヤバいんじゃね?」

何もなかったように、そう言ってあやふやにする。

「え?!」

予想通り、俺のその一言に焦りだす松本を見て、期待通りの反応につい笑ってしまう。

「え、え、やば時間ーー!!!」

なんで教えてくれなかったの!?とでも言いたげに、涙目で俺を見る。

…ホントはもっと前から時間がヤバいのは知ってたんだけど、あえてそれを言わなかったのは、、、

少しでも長く彼女の視界に映っていたいっていう、俺の勝手なわがままと…

…松本を他のヤツに取られたくないっていう、それ以上の独占欲。

いつだって、俺をこんな気にさせるのは彼女だけ。

もういいじゃん、間違いでもなんでもいいから、俺のもんになれって…

そんな気持ちがいつも独り歩きして、止まることを知らない。

「やべ、ダッシュだ!!」

だからその気持ちを隠すように、俺はそう言うと、全速力でかけ出した。

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