初恋キャンディ〜one-way love〜
フルートを習い始めたら、後はもう早い。

ピアニストの母からの特訓と、父の知り合いの指揮者さんの協力で、元々音楽が好きだった私は、すぐに頂点にのぼりつめた。

全国各地で開かれる、あらゆる音楽家のコンサートで実力を発揮しては、母主催の大会では、大人を差し置いて常に優勝。

気づけば”天才カナリヤ"という称号を与えられ、音楽業界で知らない人はいないというほどの、一躍有名人になっていた。

勝ち取った賞が増えれば増えるほど、実力が認められたことが嬉しくて、優勝できたら、もっと上を目指そうっていう気持ちになれて…

だから私は、この先もフルートを続けていくのだと信じて疑わなかった。

でもまさかあんなことが起こるなんて…

その日は、よく晴れた青空が印象的な4月の下旬。

そして、それは突然起きた。

いつものように、母からの特訓を受けていた時のこと…

ピアノの音が突然止まったと思った、次の瞬間…

大きな音を立てて、ピアノの椅子から母が落ちた。

…というより、倒れた。

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