初恋キャンディ〜one-way love〜
「え、ママ!?」

慌てて抱き起こすけれど、いくら揺すっても、母は目を開けない。

ただ苦しそうな呼吸をするばかりだ。

焦りと恐怖でフリーズしそうな頭を必死で回転させて、私はなんとか救急車を呼んだ。

状況もちゃんと説明出来ていたか分からないけど…とにかく怖くて怖くて、、

まもなく救急車が来て、病院に運ばれた母は、なんとか一命をとりとめたものの…

「右上半身の麻痺が残ってしまうでしょう。」

医師いわく、母の症状は、ストレスからくる脳卒中。

倒れたときに頭を強く打ってしまったことが原因で、右上半身の麻痺が残ってしまうというのだ。

しかも、リハビリをやったとしても完全には治らず、僅かな震えなどは残ってしまうのだという。

「え、でも先生、治るんですよね?だって母はピアニストで!」

「残念ですが、続けることは難しいかと…」

「そんな…」

思わず泣き崩れる私の背中を、父がそっとさする。

ピアニストにとって、命とも言える手先。

私は、ピアノが母にとってどれだけ大切で、どれほど大事なものなのかを痛いほど知っている。

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