初恋キャンディ〜one-way love〜
母は、この辺でもかなり有名な一流ピアニストだ。

"天才ソプラノピアニスト美雨季"の指導を受けたいと、遠くの方からわざわざこの都市に引っ越して来る人もしばしば。

だからそんな母の話を聞くのは、別に今日に限ったことではない。

ただ、私が衝撃を受けたのは、その会話の内容だった。

「ねーそのことで、あたしちょっと思ったんだけど…」

「え、何を?」

「多分だけど、ストレスの原因って、娘の莉雨ちゃんじゃないかなって思うんだよね…」

「莉雨って、あの?」

「そーそー。”天才カナリヤ"とかって最近無駄に騒がれてる子。」

そう話す先輩の言葉からは棘を感じる。

でもそんなことより…

「え、ママの脳卒中の原因が私…?」

頭を鈍器で殴られたかのような衝撃。途端に目の前が真っ暗になる。

フルートを始めてから輝き出していた世界が、一瞬にして色を失う。

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