偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
植栽活動の日曜日は気温も高くすっきりと晴れていた。

薄手の長袖シャツとデニムを身に着ける。

櫂人さんは昨夜から大阪に出張していて、明日の帰宅予定だ。


活動申込時に説明された持ち物を持参し、家を出た。

集合場所になっている小学校の前には様々な年齢層の人たちが大勢集まっていた。

越してきて日が浅いせいもあり、私には近隣に知り合いがいない。

ちなみに自宅の階下の部屋は現在空き家だと櫂人さんに教えられた。


「――斎田さんはA班でお願いします」


「はい」


活動を取り仕切るリーダーの男性に指示を受け、A班に向かう。

二組の六十代くらいのご夫婦が同じ班のメンバーだった。


「斎田と申します。よろしくお願いします」


加納(かのう)です、こちらこそよろしくね」


三野(みの)です。今日は一緒に楽しみましょうね」


ご婦人たちが穏やかな表情で話しかけてくれる。

優しそうな人たちでホッと胸を撫でおろす。

加納さんと三野さんは、長年この活動に参加しているらしくお互いに友人同士だという。

手際も良く、初心者の私は作業について丁寧な指導を受けた。


「そうそう、根の部分に気をつけてね」


「あら、藍ちゃん上手ね」


「ありがとうございます」


“藍ちゃん”と親し気に呼んでくださるのも嬉しい。
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