偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
「そうだったんですか? ご夫婦での参加って素敵ですね」


「最初はずいぶん嫌がっていたのよ。でも平日は仕事で忙しいし、私も自分の用事に精一杯で夫婦なのに段々会話も減ってきていたの。たまに一緒にいてもなにを話せばいいかわからなくなってね。その状態に悩んでいたとき、加納さんに誘ってもらったの」


「私も以前は三野さんみたいに悩んでいたのよ。この人は根っからの仕事人間で、これといった趣味もなくて。退職したらどうなるのかと心配していた矢先にこの活動を知って、試しに始めてみたら夫も私もハマっちゃってね。それで声をかけたの」


ふたりの奥様はニコニコと顔を合わせてうなずきあう。


「当初は、夫婦で同じ時間を過ごす機会や共通の趣味をもてたらっていう軽い気持ちだったのよ」


「そうそう、それがいつの間にか加納さんとともに古株の常連になっちゃった」


フフと楽しそうに笑うふたりはとても仲が良さそうだ。

もちろんご自身の伴侶とも。

その姿が眩しくて羨ましかった。

長い時間を経ても一緒にいたいと、いるためになにかをしようと思えるなんて本当に素敵だ。
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