偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
翌朝出勤準備を終え、いつも通りに彼を見送り私も家を出る。

ロッカールームに足を踏み入れると渚が着替えている最中だった。


「おはよう、渚」


「藍、おはよう。どうしたの? 具合が悪い?」


「ううん、大丈夫よ。ちょっと心配事があって……ありがとう」


昨日からこういった類の会話ばかりを繰り返している気がする。


「藍にしては早耳ね」


「え?」


「朝一番に流れている辺りが悪質だし、気にする必要はないわよ」


渋面を浮かべながら親友が強い口調で言い切る。


「ええと渚、なんの話?」


「え? 心配事って、ネットニュースの件でしょ?」


親友は虚を突かれたように瞬きを繰り返す。


ネットニュース?


話の見当がつかず、親友に尋ねる。


「ごめん、本当にわからないんだけどなにかあったの?」


「変なニュースが流れているのよ。知らなかったの? てっきりその件で体調を崩したんだと思ったわ」


渚の返答に胸の奥に嫌な予感がさざ波のように広がっていく。


「どんなニュースなの?」


「知らなくていいわよ。面白おかしく取り上げているだけだから」


「お願い、教えて。知りたいの」


言い募る私に親友は渋々自身のバッグからスマートフォンを取り出して、画面を見せてくれた。
< 155 / 208 >

この作品をシェア

pagetop