偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
二基あるエレベーターの呼出ボタンを押すと、近いフロアで停止していたようですぐにやってきた。
早く早く!
心の中で足踏みをする。エレベーターに乗り込んだ瞬間、玄関のドアが荒々しく開いた。
「藍、待て!」
いつもと違う余裕のない表情と声、乱暴な物言いも初めて耳にする。
私を追いかける必要なんてないのに、なんで呼び止めるの?
お願いだから私に構わないでほしい。
中途半端な優しさなんていらない。
「勝手に納得するな! 俺の話をちゃんと聞けよ!」
叫ぶ彼の姿に小さく首を振って「閉」ボタンを連打する。
閉まる速度は変わらないとわかっているのに気持ちが急く。
扉が閉まって、エレベーターが下降を開始した途端、堰を切ったように涙があふれた。
いつ誰が乗ってくるかわからない。
それでも今この瞬間にひとりなのはありがたかった。
胸が痛くて苦しくて、息ができない。
こんな風に話したかったわけじゃない。
こんな結末をのぞんだわけじゃない。
それなのに、こんな形でしか別れを告げられなかった。
本当はずっとそばにいたかった。
あの人にとってたったひとり、愛される人になりたかった。
でももう、それは叶わない。
早く早く!
心の中で足踏みをする。エレベーターに乗り込んだ瞬間、玄関のドアが荒々しく開いた。
「藍、待て!」
いつもと違う余裕のない表情と声、乱暴な物言いも初めて耳にする。
私を追いかける必要なんてないのに、なんで呼び止めるの?
お願いだから私に構わないでほしい。
中途半端な優しさなんていらない。
「勝手に納得するな! 俺の話をちゃんと聞けよ!」
叫ぶ彼の姿に小さく首を振って「閉」ボタンを連打する。
閉まる速度は変わらないとわかっているのに気持ちが急く。
扉が閉まって、エレベーターが下降を開始した途端、堰を切ったように涙があふれた。
いつ誰が乗ってくるかわからない。
それでも今この瞬間にひとりなのはありがたかった。
胸が痛くて苦しくて、息ができない。
こんな風に話したかったわけじゃない。
こんな結末をのぞんだわけじゃない。
それなのに、こんな形でしか別れを告げられなかった。
本当はずっとそばにいたかった。
あの人にとってたったひとり、愛される人になりたかった。
でももう、それは叶わない。