偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
『いくら保護者代わりとはいえ是枝さんは過保護すぎでは? 斎田さんの顔色も酷いし、いったいなにがあったんですか?』


「ご心配をおかけしてすみません。私が対処いたしますので大丈夫です」


努めて冷静に返答する俺に、彼女は舌鋒鋭く言い返す。


『大丈夫ではないので連絡しているんです。先日のパーティーでお伝えしましたよね? 斎田さんがあなたの幼馴染に攻撃されていると。あのネットニュースも恐らくその関連だとご存知ですよね?』


「さすが白坂さん、よくご存知ですね」


『誤魔化さないでください。斎田さんにおふたりの出会いについて話されたんですか?』


「いえ、まだ」


話そうと思っていた矢先に喧嘩になったなんて、言えるわけがない。


『できるだけ早く真実を伝えるべきだと、何度も申し上げましたよね?』


およそ令嬢らしからぬ強い口調で責められる。

白坂さんは藍に自身の恋を応援してもらい、かつ成就させてもらったことに恩義を感じている。

そのためずっと藍の幸せを心から祈っている。


『いくら偽装とはいえ、元婚約者の私が栗本さんの近くにいるのは斎田さんにとって間違いなく不安要素です。これも幾度となく申し上げましたが、言葉にしなくては本心は伝わりませんよ』


「私なりに彼女には伝えています」


『それならなぜ斎田さんはあなたを拒絶してるんですか?』


真っ当な指摘に耳が痛い。

白坂さんの遠慮ない物言いが俺の心に深く刺さる。
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