偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
逃がした責任を取って容姿の似ている私が身代わりになるという、まるでマンガのような話になるかと思ったが、どうやら考えすぎだったようだ。


「お前には代理ではなく、正式に俺の見合い相手になってもらう」


「へ……？」


なにを、言ってるの？　


耳にした情報が信じられず、瞬きを繰り返す。


「あの、誰が？」


「お前と俺が、見合いをするんだ」


言われた内容を脳が理解した途端、私は声を張り上げた。


「い、意味がわかりません！」


身代わりよりも、ありえない。


なんで私と現実にお見合いをするの？　


「俺には今すぐ婚約者もしくは妻が必要で、お前は俺の見合い相手を逃がした。お前が俺と見合いをする十分な理由だろう」


「そんなの、理由になりません」


この人とお見合いをするくらいなら、逃がした件を責められるほうがマシだ。


「お前に拒否権はない」


抗議も空しく、一方的に切り捨てられる。

冷たく低い声からは彼の本気が伝わってくる。


「会ったばかりのまったく知らない人とお見合いだなんてありえません！」


「お前の勤務先、家族構成ならすでに知っているが？　それに見合いとは大抵は知らない者同士が出会うものだろ」


「だからって、こんな話はありえないです。ちょっと待ってください……なぜ私の情報を？」


「お前の名前を元に少し調べれば、ある程度はわかる」

　
呆れたような口調に小さなイラ立ちが募る。

大企業の情報網の凄さをまざまざと思い知らされ、怖くなる。
< 25 / 208 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop