偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
「わ、私はあなたとお見合いなんてしたくありません」


声が震えているのを気づかれたくなくて必死に虚勢を張る。

こんな傲慢な男性に弱みを見せたくない。

本来なら今頃美味しいお茶を堪能しているはずだったのに、なんでこんなところにいるんだろう。


「それなら、お前は俺の結婚相手を逃がした償いをどうとるんだ?」


「白坂さんがお見合い相手だなんて知らなかったですし、栗本さんなら、もっとほかに素敵な方がいらっしゃるのでは?」


思わず本音を告げると、彼は数回瞬きをして……噴きだした。


「ハハッそうきたか、お前、本当に面白いな。大体のご令嬢なら喜んで俺との見合い話を受け入れるのに」


「私はご令嬢ではないので」


縁談なんてまったく望まない。

心の中で思い切り悪態を吐く。


「気に入った。やっぱりお前がいい」


先ほどの威圧的な雰囲気はどこへやら、一転して色香のこもった視線を向けてくる。


「今日中に婚約者を決めないと、俺には会社を継ぐ権利がなくなる」


「どういう意味ですか?」


突然変わった話の内容に思わず聞き返す。


「会長である祖父が伴侶探しをかわしてきた俺に業を煮やしてな。一年の間に婚約者を決めて結婚しろ、さもなくば会社は継がせないと命令された」


「一年なら、まだ時間の猶予があるのでは? この状況を正直に説明なさったらいかがですか?」


「その期限が今日なんだよ。このままだと
恐らく祖父が選んだ令嬢と結婚させられる。せめて伴侶は自分で選びたい」


自身の希望を力強く言い切る姿になぜか胸が小さな音を立てた。
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