偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
『正式にあなたと婚姻した暁には敏感肌用化粧品の共同開発をしたいそうよ。本当に抜け目がないというか相変わらずやり手よね』


化粧品の共同開発だなんて。


そんな大それた話になっていたの?


栗本の販路は巨大だし、ネームバリューは言うまでもない。

こちらにとっては願ってもない機会だ。


「……社長も栗本副社長と面識があるんですよね?」


『ええ、会社同士の繋がりもあるから。貴臣ともそれなりに親しいわよ』


そういえばあのふたりは大事にしてるものが同じね、と社長は呟く。


『私の祖母と栗本副社長のおばあ様が学生時代からの友人同士なのよ。若い頃に将来は自身の子ども同士を結婚させようと話をするくらい親しかったそうよ。その縁もあって栗本副社長とは年に数回は顔を合わせてるわ』


「知りませんでした……」


大企業同士はどこかで繋がっているのだなと変なところで感心してしまう。

私の両親に連絡するより先に蘭子さんに電話をする理由がやっとわかった。


『お互いに本気だったわけじゃないらしいけれどね。結婚は本人の気持ちが一番大切だもの。うちはあちらのような大企業でもないからね』


蘭子さんは軽い口調で話すが、是枝家もずいぶん格式の高い立派な家柄だ。


『栗本副社長は持ち込まれる縁談はすべて断っているし、政略結婚や会社がらみの婚姻を毛嫌いしてるのよ。なのにうちの社員と結婚したいだなんて驚いたわ。しかもひとめ惚れして捜していたって……まるでお伽話ね』
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