偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
【覚悟は決まったか?】


期限の前日に突然彼からメッセージが送られてきた。

断られると思っていない文面にイラ立ちが募る。


【決まってません】


【俺はあきらめが悪いし、お前に逃げ道はないぞ】


メッセージすら傲慢で呆れてしまう。

返信に頭を悩ませている間に再びのメッセージが送られてくる。

その短い一文を目にした途端、胸が詰まった。


【大事にする】


なんでこんな言葉を送るの?


【俺はお前と結婚したい】


真っすぐで飾り気のない求婚に動揺する。


私たちの間には甘い気持ちなんてなにひとつないはずでしょう?


【明日までに考えます】


スマートフォンの画面と睨めっこをして何度も入力しては消すという作業を繰り返し、やっと返事を送信した。

逃げ道はないと理解していても、逃げ出したくなる。


あの人が後継ぎになるかどうかなんて私には関係ないはずなのに、なんで気になるの?


思わず閉じた瞼の裏になぜか彼の姿が浮かんだ。
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