偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
その後、当たり前のように私の分を含めた会計を済ませた彼に、小声で話しかける。
「あの、お支払いを……」
「婚約者に支払わせると思うか?」
「いえ、でも、それとこれは話が別です」
引かない私に彼が凛々しい片眉を上げた。
「じゃあ代金代わりに、名前で呼んでくれ」
「え?」
「俺の名前を知らないのか?」
「知ってます!」
「なら呼べるだろ? 婚約者をいつまでも役職名で呼ぶな」
なぜか不機嫌そうに眉根を寄せる。
さらには、通行の邪魔になるからと私の腰に手を回し、ティーサロンを出てすぐの従業員出入り口のプレートが掲げられた場所に誘導される。
腰に触れる大きな手の感触と彼の香水の香りに、心が落ち着かない。
「俺の連絡先を登録したか?」
「はい」
唐突な問いかけに戸惑いながらも返答する。
「……どんな名称で登録した? “栗本副社長”とかじゃないよな?」
まさかの正解に目を見開く。
私の反応に答えを悟ったのか、彼が胡乱な目を向けてくる。
「俺の下の名前はなんだ?」
「か、櫂人さん……」
「正解。じゃあこれからはそう呼んで、登録名も変更するように」
「でもそんな、いきなりは」
「結婚、するんだよな?」
何回目の確認だ?と綺麗な目を細めて言い募ってくる。
この人は私が思う以上に強引で、自分のペースに相手を引き込むのが本当にうまい。
「あの、お支払いを……」
「婚約者に支払わせると思うか?」
「いえ、でも、それとこれは話が別です」
引かない私に彼が凛々しい片眉を上げた。
「じゃあ代金代わりに、名前で呼んでくれ」
「え?」
「俺の名前を知らないのか?」
「知ってます!」
「なら呼べるだろ? 婚約者をいつまでも役職名で呼ぶな」
なぜか不機嫌そうに眉根を寄せる。
さらには、通行の邪魔になるからと私の腰に手を回し、ティーサロンを出てすぐの従業員出入り口のプレートが掲げられた場所に誘導される。
腰に触れる大きな手の感触と彼の香水の香りに、心が落ち着かない。
「俺の連絡先を登録したか?」
「はい」
唐突な問いかけに戸惑いながらも返答する。
「……どんな名称で登録した? “栗本副社長”とかじゃないよな?」
まさかの正解に目を見開く。
私の反応に答えを悟ったのか、彼が胡乱な目を向けてくる。
「俺の下の名前はなんだ?」
「か、櫂人さん……」
「正解。じゃあこれからはそう呼んで、登録名も変更するように」
「でもそんな、いきなりは」
「結婚、するんだよな?」
何回目の確認だ?と綺麗な目を細めて言い募ってくる。
この人は私が思う以上に強引で、自分のペースに相手を引き込むのが本当にうまい。