偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
「あの、中西さん。栗本副社長に縁のある色や形はありませんか?」


「ご縁のあるお色味はわかりかねますが、当店では近頃よく青色系統の衣類を選ばれてますね」


「青色が好きなんでしょうか……」


「以前青色には思い入れがあると、伺った記憶がございます。理由は存じ上げないのですが」


すみません、と言われて首を横に振る。


「急に申し訳ないのですが、青色のドレスを見せていただけませんか?」


「ええ、もちろんです」


弾んだ声で了承した中西さんがすぐに一着のドレスを取り出す。

それはレースを基調とした、胸元は深い青でそこから水色、白と緩やかなグラデーションを描く繊細なドレスだった。

試着を勧められて、着替え終えた私に中西さんが満足そうにうなずく。


「とてもよくお似合いです。きっと栗本様も気に入られますよ」


「あ、ありがとうございます」


褒められすぎて恥ずかしくなる。

そこへほかの店員に呼ばれた副社長がやってきた。


「藍、着替えたって……」


鏡越しに彼と目が合った。

綺麗な二重の目が大きく見開かれ、振り返るとじっと凝視された。


「――よく似合ってる」


「あ、ありがとう」


「俺の好きな色だし、藍の色でもあるな。中西さんに聞いたのか?」


「うん……あの、ごめんなさい」


「なんで謝るんだ?」


「聞き出すような真似をしたので……」


さっきは思い至らなかったけれど、大事な思い出を勝手に詮索してしまった。
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