偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
この状況では、さすがにひとりで帰るとは主張できない。
大量の荷物を車に詰め込み、数時間前と同じ滑らかな彼の運転で、自宅マンションにたどり着いた。
帰りの車内ではお互いに無言だった。
近くの駐車場に車を停めて、荷物を運びだす。
「急いでいるのに、ごめんなさい」
「藍が気にする必要はない。それより……さっきは綾がすまなかった」
ごく自然に上田さんを呼び捨てにする姿に、ふたりの仲の深さを感じる。
「いえ、幼馴染みなんですよね?」
ふいに貴臣くんを思い出す。
「ああ、近所だったのもあるが綾の家も代々事業を営んでいて、幼い頃からともに過ごす機会が多かったんだ。綾は俺より六つ年下にはなるが」
上田飲料株式会社を知らないか、と問われて血の気が引いた。
「……業界最大手の飲料会社ですよね?」
「ああ、そうだな。綾はそこの三女だ」
何気なく教えられた情報にひゅっと息を呑む。
どおりで身のこなし方が綺麗なわけだ。
あれほど魅力的で自分を慕ってくれる人がそばにいるのに、なんで私を婚約者にしたのか理解に苦しむ。
「……可愛らしい方ですね」
それ以外になにを口にすればいいかわからない。
「綾は妹みたいな存在だが、見つかったのは厄介だ」
「どうしてですか?」
「綾の母親は顔が広いうえに噂好きだ。俺たちが本当に想いあっているのか、事細やかに周囲に話して興味をもつだろう」
「気にしすぎですよ」
「いや、用心するに越したことはない。そもそも俺の母にお前をどう紹介したか、忘れたのか?」
大量の荷物を車に詰め込み、数時間前と同じ滑らかな彼の運転で、自宅マンションにたどり着いた。
帰りの車内ではお互いに無言だった。
近くの駐車場に車を停めて、荷物を運びだす。
「急いでいるのに、ごめんなさい」
「藍が気にする必要はない。それより……さっきは綾がすまなかった」
ごく自然に上田さんを呼び捨てにする姿に、ふたりの仲の深さを感じる。
「いえ、幼馴染みなんですよね?」
ふいに貴臣くんを思い出す。
「ああ、近所だったのもあるが綾の家も代々事業を営んでいて、幼い頃からともに過ごす機会が多かったんだ。綾は俺より六つ年下にはなるが」
上田飲料株式会社を知らないか、と問われて血の気が引いた。
「……業界最大手の飲料会社ですよね?」
「ああ、そうだな。綾はそこの三女だ」
何気なく教えられた情報にひゅっと息を呑む。
どおりで身のこなし方が綺麗なわけだ。
あれほど魅力的で自分を慕ってくれる人がそばにいるのに、なんで私を婚約者にしたのか理解に苦しむ。
「……可愛らしい方ですね」
それ以外になにを口にすればいいかわからない。
「綾は妹みたいな存在だが、見つかったのは厄介だ」
「どうしてですか?」
「綾の母親は顔が広いうえに噂好きだ。俺たちが本当に想いあっているのか、事細やかに周囲に話して興味をもつだろう」
「気にしすぎですよ」
「いや、用心するに越したことはない。そもそも俺の母にお前をどう紹介したか、忘れたのか?」