偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
部屋の鍵を開けて荷物を受け取ろうと手を伸ばす。
「ありがとうございます。あの、やっぱりこの洋服のお支払ですけど……」
恐る恐る考えていた事柄を口にする。
「藍、荷物を入れたいから玄関に入ってもいいか?」
私の言葉なんて聞こえなかったように、櫂人さんが尋ねる。
「あ、はい、どうぞ」
慌てて扉を大きく開け、彼を中に促す。
櫂人さんは玄関わきに荷物をゆっくり下ろす。
そして振り返った途端、胸の中に抱き込まれた。
バタン、と背中で大きな音がして玄関ドアが閉まった。
「本当に無用心だな。簡単に男を家に入れるな」
「無用心って……櫂人さんは荷物を運んでくれていたじゃないですか」
知り合いでもない男性を家の中に上げたりなんかしない。
そのくらいの危機意識は持ち合わせている。
「なんで同じマンションに学生時代の男がいるんだ?」
「男って……偶然一緒だったんです。再会してお互いに驚いたんですから」
「本当に?」
ギュッと抱きしめる腕に力が込められる。
胸に抱え込まれている私には彼の表情はうかがえない。
でも耳元近くで囁かれる声には明らかに不機嫌さが滲んでいる。
「そんな話は初耳だ。しかもなんで飲み会に誘われるんだ?」
「初耳もなにも不自然な話ではないし、ただの社交辞令ですよ」
他愛ない日常会話のようなものだし、飲み会に参加するつもりはない。
私の返答にはあ、と大きなため息が頭上から落ちてきた。
私は腕の中から必死に身をよじって、彼の顔を見上げる。
「ありがとうございます。あの、やっぱりこの洋服のお支払ですけど……」
恐る恐る考えていた事柄を口にする。
「藍、荷物を入れたいから玄関に入ってもいいか?」
私の言葉なんて聞こえなかったように、櫂人さんが尋ねる。
「あ、はい、どうぞ」
慌てて扉を大きく開け、彼を中に促す。
櫂人さんは玄関わきに荷物をゆっくり下ろす。
そして振り返った途端、胸の中に抱き込まれた。
バタン、と背中で大きな音がして玄関ドアが閉まった。
「本当に無用心だな。簡単に男を家に入れるな」
「無用心って……櫂人さんは荷物を運んでくれていたじゃないですか」
知り合いでもない男性を家の中に上げたりなんかしない。
そのくらいの危機意識は持ち合わせている。
「なんで同じマンションに学生時代の男がいるんだ?」
「男って……偶然一緒だったんです。再会してお互いに驚いたんですから」
「本当に?」
ギュッと抱きしめる腕に力が込められる。
胸に抱え込まれている私には彼の表情はうかがえない。
でも耳元近くで囁かれる声には明らかに不機嫌さが滲んでいる。
「そんな話は初耳だ。しかもなんで飲み会に誘われるんだ?」
「初耳もなにも不自然な話ではないし、ただの社交辞令ですよ」
他愛ない日常会話のようなものだし、飲み会に参加するつもりはない。
私の返答にはあ、と大きなため息が頭上から落ちてきた。
私は腕の中から必死に身をよじって、彼の顔を見上げる。