丸い課長と四角い私
唇にふれた柔らかいそれは、まるで感触を楽しむかのように、私の唇を啄んでいる。
たまんなくなってはぁっと小さく甘い吐息を漏らしたら、あたたかくぬめった感触が入ってきた。
求められてぎこちなく求め返すと、肩を掴んでいた蔵田課長の手に力が入る。
唇の角度が変わるたび、どちらのものともわからない熱い吐息が漏れる。
溺れてしまいそうで怖くなって、思わず蔵田課長のシャツを掴んだら、右手で後ろあたまを押さえ込まれた。
身体中を駆け回る熱は出口を求め、涙になって落ちていく。

唇が離れ、指で涙を拭ってくれた。
じっと私を見つめる濡れた瞳はいつもと違っていて、いつまでたっても心臓は落ち着かない。

「いいよな?
一年もお預け喰らってたうえに、昨日は据え膳、我慢したんだぞ。
俺、もう待てない」

耳元で囁いて離れた蔵田課長の目は、いつもの草食動物から、ギラギラと獰猛な肉食獣の目に変わっていて、……ゾクリとした。


その後。
月曜日は休んでてねって云われた。
私がいると、矛先がそっちに向いちゃうから、って。


< 19 / 35 >

この作品をシェア

pagetop